純ニッケル、純銅、Al-Mg合金、γ-TiAl金属間化合物を対象に、いずれも広く変形温度、歪み速度、最終歪み量を変えて単軸圧縮試験を行い、変形挙動と結晶粒組織の調査、集合組織測定ならびに結晶粒界解析を実施して、様々な金属材料における動的再結晶下での新粒生成機構の解明をすすめた。金属間化合物では高温、低歪み速度条件、すなわちいわゆる低Z変形条件で先鋭な集合組織が形成された。純ニッケルならびに純銅では、動的再結晶が生ずる場合には、変形温度が低温になるほど、また歪み速度が高くなるほど、すなわち高Z変形条件で集合組織が発達した。低Z変形条件では集合組織はほとんど形成されなかった。典型的な高Z条件と低Z条件で試料を作製して結晶粒界の解析を行ったところ、低Z条件では双晶境界の頻度が全大角粒界の50%以上にも達するのに対し、高Z条件では10%にも満たなかった。これに対し、γ-TiAlでは低Z条件でも双晶の頻度は数%に過ぎなかった。このことから、高Z変形条件では、動的再結晶初期に生ずる結晶粒界の湾曲によって結晶粒界近傍に結晶方位差の大きい下部組織が形成され、それが新粒生成をもたらすと考えた。この新粒は変形によってある量の結晶回転を変形の安定方位に向けて生じた後に再度新粒化する。この結晶回転によって集合組織が発達したのではないかと考えられる。一方低Z変形条件では、結晶粒界付近に結晶方位差の大きな領域は形成されず、歪み誘起粒界移動により新粒が生成される。新粒は変形の安定方位に向けた結晶回転の影響を受け、双晶の形成頻度が少ない金属間化合物では先鋭な集合組織の発達をもたらす。これに対し銅やニッケルでは、粒界移動の過程で双晶形成により結晶方位がランダム化するために集合組織が発達することがなかったと考えられる。歪み誘起粒界移動が困難と考えられるAl-3mass%Mg合金の動的再結晶では、変形の初期には(011)繊維集合組織が発達するが歪みの増大とともに、(100)(圧縮面)が先鋭化した。この形成は、変形前に存在していた、(100)近傍方位の結晶粒が、変形の進行中も回復が容易なために周囲に存在する歪みの大きな結晶粒を消費して成長することによると考えられる。
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