動的再結晶における新粒生成の機構を解明することを目的に、γ-TiAl、純ニッケル、純銅を対象に、高温単軸圧縮変形を温度、歪み速度ならびに歪み量を種々変えて行い、集合組織ならびに結晶粒界解析を行った。動的再結晶においては、新粒生成に先行して必ず結晶粒界が湾曲することに注目し、湾曲の程度と結晶粒界近傍の結晶方位分散の関係を調べた。その結果、湾曲が進行するほど結晶粒界近傍に形成されるサブグレイン間の方位差が大きいことを見出した。また、動的再結晶が生ずる変形条件の範囲内での高温、低歪み速度領域(いわゆる低Z条件)ではγ-TiAlには先鋭な集合組織が形成されるが、純ニッケルや純銅では集合組織はそれほど発達しないこと、低温、高歪み速度条件(いわゆる高Z条件)では集合組織の発達はきわめて弱いことを見出した。結晶粒界解析の結果、低Z条件で変形した純銅、純ニッケルには高い頻度で双晶が形成されていることが判明した。大角粒界の全長に占める双晶境界の割合は50%を越える場合も認められた。同じく低Z条件での変形であってもγ-TiAlには双晶はほとんど認められなかった。これらの事実から、低Z条件における新粒の主たる生成機構は歪み誘起粒界移動であると結論した。一方高Z条件では双晶の頻度はZ値が増加すると共に小さくなった。このことは、高Z条件における動的再結晶は、新粒が結晶粒界近傍の不均一変形領域から核生成・成長によって生まれることを示している。これらの成果は、動的再結晶を活用した熱間加工により、結晶粒径、双晶境界頻度ならびに集合組織の制御が可能であることを示唆している。
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