1.ナノサイズ微粒子の複合化機構の考察 上記検討により確立した各々の解析手法を用いて、以下の因子に注目した微粒子複合化機構の考察を行った。 (1)粒子とイオンとの相互作用 溶液中の錯形成剤の種類に注目し、微粒子と溶液中の金属イオンとの相互作用に関する考察を行ったところ、錯形成剤の種類によって相互作用の強さが違う事がわかった。またクエン酸を錯形成剤に用いることによって良好な膜質で多量に共析が可能な条件が見いだされた。錯形成剤は無電解析出法に常用される特徴的な試薬であり、金属イオンと錯体を形成しイオンの析出に重要な役割を持つが、この事に注目する点は本研究の有する独創性の一つであり、錯形成剤の選択が共析量に結びつく重要な因子であることを初めて明らかにした。 (2)膜とイオン・粒子との相互作用 膜表面への微粒子や金属イオン等の吸着挙動を調べるために粒子の帯電の大きさと符号を測定したところ、粒子の等電点はpH2〜3付近でありそれ以上のpH領域では粒子は負に帯電していることがわかった。しかしながら複合機構と粒子の帯電には直接の相関は見られないものと考察された。 2.構造因子と機能発現の相関の予備的調査 透過型電子顕微鏡、電子線マイクロアナライザにより膜の微細構造を観察し、複合材料の物性との相関の予備的検討を行ったところ、微粒子共析状態に関しては透過型電子顕微鏡により確認できるような粒子の凝集は認められなかった。また一次粒子の直接観察は困難であることがわかった。
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