研究概要 |
本年度の研究目的は前年度で得られた超微細粒試料、試作二軸引張り試験機を用い、室温、高温下での二軸応力下の塑性加工性評価パラメータを求め、変形過程中の組織変化と関係付け、単軸のそれと比較し二軸応力下での加工評価パラメータの有用性を検討した。その結果以下の結論が得られた。 (1):二軸引張試験機および十字形試験片を用いることで,試験片面内に二軸応力が作用する均一変形部を作り出すことが可能で、大変形を効率よく試験片に付与するためには,変形中の試験片表裏の対称性を維持することが必要で、十字形試験片の中心部を両面から板厚減少のため加工する必要がある. (2):作製した十字形試験片は高温下で80%以上の塑性変形を二軸応力下に付与することが可能である. (3):単軸応力下ではひずみ速度の増加と供にm値は減少していくが,二軸応力下では高速変形である1.7x10^<-1>s^<-1>までm値0.30以上を維持する. (4):同一粒径試料において単軸および二軸応力下では機械的諸特性に差異が生じた.また、その差が顕著に表れた焼なまし温度673Kにおいて単軸および二軸応力下ではn値は0.33および0.26であり,r値は1.08および1.24であった. (5):粒径が変化することにより機械的諸特性に及ぼす影響は単軸応力下と二軸応力下では異なった. (6)試験温度673Kにてひずみ速度8.3x10^<-2>s^<-1>において約60%変形した後の,せん断変形を伴わない二軸応力下でも動的再結晶の形成が確認された. (7)試験温度673Kにて単軸応力下では引張方向に結晶粒が伸長し引張方向に対して垂直に空隙が生じるが,二軸応力下では結晶粒が等軸を維持し任意の方向に対して空隙が生じる. 以上、微細結晶粒を用いた超塑性変形においては負荷応力状態により変形の様子が異なるため、加工条件推定のための変形シミユレーションにおいては二軸応力下での加工評価パラメータを用いる必要がある。
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