還元により界面活性能が失われるアゾベンゼン修飾カチオン性界面活性剤を用いて炭化ケイ素.(SiC)およびダイヤモンドの微粒子をニッケルめっき浴に分散し、ニッケルイオンの還元と同時に界面活性剤を還元する方法により、これらの微粒子とニッケルとの複合皮膜を電解により作成している。この方法によりSiCの含有率は60%以上、ダイヤモンドでは最大約46%であった。一方、酸化還元不活性な界面活性剤を用いた場合、SiCで30%以下、ダイヤモンドで20%以下であった。これは、酸化還元不活性な界面活性剤では、ニッケルイオンの還元時に界面活性剤が微粒子表面に吸着したままであり、その結果、微粒子が基板表面で析出せず、ニッケルマトリックスに高率よく取り込まれず、さらに、取り込まれても吸着した界面活性剤が新たな微粒子の取り込みを妨害してしまうためである。一方、アゾベンゼン修飾カチオン性界面活性剤を用いた場合、Niイオンと一緒に界面活性剤が還元され、粒子表面から界面活性剤が脱着し、粒子が基板表面で析出するため、ニッケルマトリックスへの取り込みが容易になり、複合皮膜中の粒子の含有率が高くなったと推察される。本法により得られた複合皮膜の耐摩耗性はNi/SiC複合皮膜では体積含有率とともに大きくなり、52%で最大となることが明かとなった。Ni/ダイヤモンド複合皮膜でも高い耐摩耗性を示した。
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