本研究の目的は、発泡スチロール及びPETボトルの廃プラスチック材料を用いて、表面に各種のポリマーを化学結合(グラフト)した導電性の無機超微粒子との共在下で、ケイ素アルコキシド等のゾルーゲル反応を行うことにより、ポリマーや無機超微粒子がマトリックスゲル中にナノレベルのオーダーで均一に分散した柔軟性を有する導電性無機/有機複合膜を合成することにある。さらに、添加する廃プラスチックと無機超微粒子表面のグラフトポリマー鎖との種類を適宜変化させて組み合わせることにより、得られる複合膜の吸着特性を任意に制御する手法を確立して、種々の溶媒蒸気や気体分子に対して選択的に応答する機能、すなわち、ガスセンシング機能を付与し、この選択的吸着能を複合膜の電気抵抗値の変化で検出するガス薄膜センサーへの応用についても試みる。 平成15年度は、無機超微粒子として、導電性のカーボンブラックの他に合成雲母を用いて、ゾルーゲル法による廃プラスチックからのポリマーと各種無機超微粒子とを含有する無機/有機ナノ複合膜の合成と、得られた無機/有機ナノ複合膜をガス薄膜センサーへ応用する試みについて検討した。 添加するポリスチレン及びポリエチレンテレフタレートと、無機超微粒子表面のグラフト鎖との組み合わせを変えて無機/有機複合膜を合成し、様々な気体分子のセンシング機能をテストした。その結果、曝露蒸気に対する、添加するポリマーの親和性と無機超微粒子表面のグラフト鎖の親和性とが一致する場合は、両者が一致しない組み合わせの場合に比べて、気体分子の選択的吸着特性が著しく増大した。すなわち、ポリマー及びグラフト鎖との親和性が高い気体分子(溶媒蒸気)が、選択的に良く吸着されることがわかった。さらに、気体分子を選択的に吸着する際には、無機/有機ナノ複合膜の電気抵抗値が大きく変化することも明らかになった。従って、この様な無機/有機ナノ複合膜の性質を利用することにより、新規なガス薄膜センサーとしての利用が期待できる。
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