本研究課題では、発泡スチロール及びPETボトルの廃プラスチック材料を用いて、表面に各種のポリマーを化学結合(グラフト)した導電性の無機超微粒子との共在下で、ケイ素アルコキシド等のゾル-ゲル反応を行うことにより、ポリマーや無機超微粒子がマトリックスゲル中にナノレベルのオーダーで均一に分散した柔軟性を有する導電性無機/有機複合膜を合成した。さらに、添加する廃プラスチックと無機超微粒子表面のグラフトポリマー鎖との種類を適宜変化させて組み合わせることにより、得られる複合膜の吸着特性を任意に制御する手法を確立して、種々の溶媒蒸気や気体分子に対して選択的に応答するセンシング機能を付与し、この選択的吸着能を複合膜の電気抵抗値の変化で検出するガス薄膜センサーへの応用についても試みた。 カーボンブラックや合成雲母粒子の表面に存在するOH基を足場として、粒子表面にポリスチレンやポリエステルをグラフトすることにより、廃プラスチック材料であるポリスチレン及びポリエチレンテレフタレート中に均一に分散するポリマーグラフト化無機超微粒子を合成(グラフト率:3〜20%)した。このようなポリマーグラフト化無機超微粒子と、廃プラスチック材料からのポリスチレン及びポリエチレンテレフタレートとの共存下で、ケイ素アルコキシドを用いてゾル-ゲル反応を行ったところ、ポリマーと無機超微粒子の2つの成分がマトリックスゲル中に均一に分散した無機/有機ナノ複合ゲルが合成でき、これをフイルム状にキャストすることにより薄膜化できることが明らかになった。 また、この様な無機/有機ナノ複合膜は、ポリマー及びグラフト鎖との親和性が高い気体分子(溶媒蒸気)を選択的に吸着し、その際には複合膜の電気抵抗値が大きく変化することも明らかになった。従って、この様な性質を利用することにより、新規なガス薄膜センサーとして応用できる可能性が示唆された。
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