研究概要 |
亜鉛めっきによるアルミニウム丸棒(以下丸棒と略称)間の接合とその密着強さを調べるにあたり,以下に示す5つの事項を実施した。(1)丸棒接合のための電解槽の製作,(2)丸棒の加工と両者間をネジで予備的に接合するための治具の製作,(3)丸棒の素地表面研磨のための2軸研磨機の製作と素地表面の化成前処理法の検討,(4)丸棒素地とめっき亜鉛間での密着強さの評価,そして(5)丸棒接合部の結晶構造および組織の検討,である。 (1)では,内容積が500mLで,0〜300rpmまで速度調整が可能な回転円筒型電解槽を製作した。(2)で丸棒には,被めっき部分が,(a)ストレート,(b)60°傾斜,(c)70°傾斜したものの3種類を製作した。これにより丸棒素地から垂直方向,およびせん断方向への密着強さの評価が可能となった。(3)で丸棒素地表面の化成前処理は,アルカリ亜鉛酸塩の普及浴(ジンケート浴)を用い,1回および2回亜鉛置換処理を,(a)濃度,(b)温度,(c)時間,(d)添加剤などの条件を変え実施した。ただし,アルミニウム表面の仕上げ粗度が,めっき膜の密着強度に大きな影響を及ぼすことが明らかになったので,新たに2軸回転式の研摩機を製作し適用した。さらに,前処理過程での丸棒表面の変化は,液中での丸棒の混成電位を計測することによりモニターした。(4)で高速度亜鉛めっきには,均一電着性に優れるデプソール社製の塩化物浴を利用した。めっき電流密度は50A/dm^2でめっき厚みは0.5mmとした。(5)で丸棒接合部の結晶構造は薄膜X線回折装置で,またその組成と形態は電子線微細分析装置を用いて調べた。 以上の研究から,亜鉛めっき膜とアルミニウム間での密着強さには,アルミニウム表面の化成処理条件の他に,その仕上げ粗度およびアルミニウムの表面にできた酸化物の状態が,大きく影響することが明らかになった。これらの結果は,2003年3月27日に工学院大学で行われた表面技術協会の第107回講演大会において発表した。
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