研究概要 |
有機系溶融塩として著者らが開発した1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(以下EMIBと記す)を用い,Zn-Mg合金めっきを開発する前段階として,Znめっきについて研究した.EMIB-ZnBr_2成分浴を用いた場合,平滑で金属光沢のある電析物が得られる電流密度は50A・m^<-2>と低いのに対し,この2成分浴に2価アルコールを40〜60mol%添加することにより,電流密度250〜300A・m^<-2>となり,カソード電流効率は大幅に向上し,かつ電析物の平滑性も改善された.2価アルコールの中でも,特にエチレングリコール(以下EGと記す)の添加は効果があり,電流密度300A・m^<-2>においてさえ,平滑で金属光沢のある電析物が,カソード電流効率99〜100%で得られることが分かったEMIB-ZnBr_2-EG 3成分浴の自然電極電位の測定から,亜鉛電析に有効な亜鉛イオン種は,ZnBr_4^<2->であると推測した.EG添加により,EGがEMIBのEMI^+とBr^-への解離を促進し,その結果浴中のZnBr_4^<2->の活量が増加し,亜鉛の還元電位がより貴な方向に移るため,より高い電流密度の採用が可能となり,また同時に電流効率を低下させる原因となるEMI^+の還元分解が起こらなくなると考えられる.EMIB-ZnBr_2 2成分浴のサイクリックボルタモグラムに核形成過電圧の存在を示すループが観察されたが,この2成分浴にEGを45mol%以上添加すると,この核形成過電圧のループは消失した.この理由は,亜鉛の電析に関与するZnBr_4^<2->の濃度が高くなるため,亜鉛の核生成が容易になるためと推測される.電析物の表面平滑性およびカソード電流効率は,浴中の水分含有量を10ppm程度に低下させると向上することが分かった.次年度は水溶液から電析不可能な高耐食性Zn-Mg合金の電析に進む予定である.
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