研究概要 |
ガスタービンなどの発電関係,航空宇宙産業など,構造材料に要求される使用環境が益々苛酷化する中,コーティング技術の重要性が増しつつあり,コーティング皮膜の更なる特性向上が期待されている.近年,厳しい使用環境下での基材の損傷を保護する次世代コーティング技術の概念としてTBCやEBCなどが世界的な規模で研究されているが,既存のコーティング技術(PVD, CVD,溶射法,メッキなど)では,次世代TBC, EBCを達成するのは不可能とされ,既存技術を超えた新たな原理によるコーティング技術の開発が切望されている. 超音速フリージェットPVDは,不活性ガス雰囲気中で素材を蒸発させることにより生成させたナノクラスタを超音速(3.6km/s以上)のガスの流れにより搬送,基板上に堆積,成膜させる新しい成膜原理によるコーティング技術である.本法は高い表面エネルギを有する生成直後のナノクラスタを高速に加速し高い運動エネルギを与え,ナノクラスタの堆積により成膜させるため,低温で高密度の膜の形成が可能である.また,蒸発原子をナノクラスタとして捕集し成膜させるため,既技術に比べ高い成膜速度を得ることが可能である. すでに,本法を用いて、欠陥の無い高密度金属膜(金属学会誌第65巻pp.635-643),TiおよびAlのナノクラスタを低温の基板上で物理的に混合させ、Ti基板から組成を連続的に傾斜化させたTiAl金属間化合物膜(Surf.Coat.Technol.,inpress),高密度で100μmを超える厚膜の傾斜組成TiN膜(Mater.Trans.Vol.43,pp.2932-2934)の形成を達成し,本法が新しいコーティング技術として優れた特徴を有していることを示した. また,本法に用いるノズルを改良,製作した新しいノズル内のナノクラスタとガス混相流の状態を熱流体解析により明らかとし,本法におけるナノクラスタの成膜プロセス(反応プロセス)を明らかとする基礎的知見を得た.
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