研究概要 |
前年度は,基材に5052アルミニウム合金を,肉盛金属に5052および2017アルミニウム合金を用いた摩擦肉盛材の組織および機械的性質を検討し,その特性を明らかにするとともに摩擦肉盛が表面改質に有効な手法であることを示した。本年度は,肉盛層の幅を拡大する手法としての多層肉盛の可能性を追求した。 従来の摩擦肉盛材の肉盛長さは肉盛金属の消耗長さによって制限され,幅広肉盛材の作製は困難であった。そこで,基材をその送り方向に対して垂直に移動できるように肉盛装置を改修し,肉盛金属が消耗した時点で肉盛金属を交換すると同時に基材を送り方向に垂直に移動し(以下,この移動を位相と称す),1回目の肉盛層の一部に重ねて2回目の肉盛を施して幅広肉盛材を作製し,この移動量と重なりの程度が肉盛材の諸特性に及ぼす影響を検討した。その結果,(1)1層のみの肉盛材に観察された肉盛層両端の不完全接合部は,第2層により完全に基材と接合された状態となった。この現象は位相の大小に関係なく認められた。(2)第2層にも1層のみの場合と同様に僅かではあるが肉盛層の両端に不完全接合部が観察された。この不完全接合部は位相をAS(肉盛金属の回転方向と基材の送り方向が同方向,この逆はRS)とした場合に顕著であった。(3)5052合金,2017合金を肉盛金属に用いた場合は,位相をASとし,た肉盛層の厚さは,位相の大小に関係なくほぼ一定値を示し,第1層に比較して第2層は厚くなった。(4)重量法による多層肉盛材の肉盛効率は,同種材では位相の方向に関係なく第2層の位相が大きくなるのに伴い肉盛効率は向上した。異種材では位相がRSの場合に同種材と同様の傾向を示すが,位相をASとした場合は,位相10mmまでは肉盛効率は向上するが,15mmで若干低下した。(5)多層肉盛材も熱間圧延によって積層板の作製が可能であった。
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