近年の電子機器の小型化・多機能化に伴い、搭載されている基板の内部配線やパッケージには、高密度化・高集積化が要求されている。一般に、電子機器に内蔵されるプリント配線板やパッケージ部品には、絶縁物質として有機材料が多く使用されている。この絶縁体表面に優れた密着性を有する導体層を形成することは、超微細配線を実現するために必要不可欠な重要な技術である。また、次世代のより微細な配線形成においては平滑な導体層形成が要求される。昨年までの検討で、光触媒となる二酸化チタン(TiO_2)を分散させた溶液に、基板を浸漬し上部から紫外線を照射することで、ABS樹脂およびビルドアップ工法に用いられる絶縁樹脂に密着良好な皮膜を形成することに成功している。また、現在使用されている過マンガン酸等の粗化工程では、樹脂面に数μmの凹凸を作りアンカー効果を利用して密着を得ているが、本手法では平滑な表面を維持したまま現状工程とほぼ同様の密着性の高い皮膜が得られた。また、実際にセミアディティブ工法を用い配線形成を試みたところ、現行の狭小化限界を超えるL/S10μmの配線の作成が可能であった。 そこで密着のメカニズムの解明のために、より高倍率で樹脂表面および樹脂断面を観察できるTransmission Electron Microscope (TEM)を用いた。その時、基板断面のEDX分析も行い改質による樹脂の変化を観察した。その結果、樹脂表面30μm〜40μm範囲で触媒(Sn・Pd)による密着層が形成されており、その後の無電解銅めっきもその層から析出していることを確認した。我々はこの密着層をナノアンカー層と名付けた。この結果より、従来とは、まったく違うナノレベルのアンカーで密着していることが確認できた。
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