研究概要 |
絶縁樹脂の表面に無電解めっき法にて金属を成膜する際、表面の親水性を向上させ、密着性を得るためにμmオーダーの凹凸を形成する必要がある。従来は、クロム酸や過マンガン酸等の強力な酸化剤が必要であるが、それらは重金属を含むため、環境による影響は甚大である。また、今後のエレクトロニクス分野の発展による、電子機器の内部配線の微細化に対応するためには、基板の表面粗さは問題となる。以上の点から、本研究では従来法とは違い光触媒を用いた素材表面のへの官能基導入による導体層形成法の確立について検討を行った。 その手法としては、光触媒である二酸化チタン(TiO_2)を分散させた溶液に、基板を浸漬し上部から紫外線を照射した。TiO_2は紫外線の照射により活性化し、その酸化力を用いて、樹脂表面を改質し、めっきを可能にすることを目的とした。 サンプルには、一般によく用いられる絶縁樹脂について検討を行った。その結果、改質処理を行うことにより、官能基の導入が可能であり、これにより樹脂表面の親水性が向上した。また、改質処理後、触媒化を行い、無電解めっき法にて金属皮膜を形成したところ、改質処理前後の基板表面形態は、平滑な表面を維持しているにも関わらず、従来法と同程度の1.17kgf/cmという密着性の皮膜が得られた。そこで密着のメカニズムの解明のために、樹脂断面を観察できる透過型電子顕微鏡、および基板断面のEDX分析も行い改質による樹脂の変化も観察した。その結果、樹脂表面30nm〜40nm範囲で触媒(Sn, Pd)による密着層が形成し、その後の無電解銅めっきもその層から析出していることを確認した。我々はこの密着層をナノアンカー層と名付けた。以上の結果より、従来とは違うナノレベルのアンカーで密着していることが確認できた。実際に配線形成を試みたところ、従来の狭小化限界を超えるL/S10μmの配線の作成が可能であった。
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