研究概要 |
基材にS45C,砥粒にcBN,マトリックス金属となるめっきに無電解Ni-Pめっきを用いて,超音波を印加しての電着砥石作成を行った.まず,超音波振動振幅による成膜速度の変化を調査した.振動振幅11μmまでは成膜速度が向上する.これは振動によるめっき面からの水素の脱離促進に加え,めっき面への還元剤や金属イオンの供給促進によると考え,無電解めっき浴を構成する酸化剤と還元剤の分極測定を行ったところ,振幅11μmにおいて交換電流,つまりNiの析出速度が最大となることがわかった.アルミニウムの薄膜を基材直上に設置し,基材に超音波振動を付与した際に生じるキャビテーションの量を測定した.振幅8μm以上でキャビテーションが発生しており,12μm以上の振幅ではキャビテーションにより、生成されためっき膜が破壊されるため成膜速度が低下した.超音波加振なしの場合,砥粒とマトリックス(析出金属Ni)の界面は平らかもしくは多少のくぼみが観察される.しかし,加振を行うと,砥粒界面には盛り上がりが形成される.砥粒/マトリックス界面における盛り上がり厚さは,振幅11μmで最大となる.超微小硬さ試験機により砥粒の水平方向の保持力を測定したところ,無加振に比べ,振幅11μmで作成された界面形態は,保持力が22%向上する.これは,先に述べた砥粒/マトリックス界面の盛り上がりによる.超音波振動を与えると,砥粒/マトリックス界面に盛り上がりが形成されるのは,砥粒であるcBNの熱伝導率が大きく,超音波振動によって発生した熱によって界面の温度が上昇し,無電解Ni-Pめっきの成膜速度が局所的に向上させられたため,界面が盛り上がったと考える.
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