化学ポテンシャル勾配を応用したエコスティールの開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14550720
• 研究機関: 九州工業大学
• 研究代表者: 大谷 博司 九州工業大学, 工学部, 助教授 (70176923)
• 研究分担者: 石田 清仁 東北大学, 未来科学センター, 教授 (20151368)
• キーワード: エコスティール / 化学ポテンシャル勾配 / クラッド鋼 / 表面改質

研究概要

従来の圧接による鉄系クラッド材は、それぞれの材料の特性を生かすために界面での拡散を阻止するように製造されている。しかし、化学ポテンシャルの勾配を利用して、低C系普通鋼と高C系HSLA鋼を圧接して拡散処理すると、通常の感覚とは違い、高CであるHSLA鋼が普通鋼のCをほとんど吸収し、より高いC組成を有するような逆拡散をする可能性がある。本研究では、このような逆拡散を利用した鉄系クラッド材の組織制御に関する基礎的研究を行うことを目的として、本年度は異種鉄鋼材料をクラッドした場合の界面におけるCの拡散挙動を拡散方程式の数値的解法により研究し、以下の成果を得た。
(1)Fe-0.3wt%Si-0.05wt%C 3元合金とFe-13wt%Cr-0.10wt%C 3元合金をクラッドし、炭素量の変化をシミュレーションした。
(2)Fe-0.20wt%Mn-0.03wt%Si-0.027wt%Al-0.046wt%C普通鋼とFe-1.07wt%Mn-0.38wt%Si-0.034wt%Al-0.120wt%C HSLA鋼をクラッドし、炭素量の変化をシミュレーションした。
(3)Fe-0.20wt%Mn-0.03wt%Si-0.027wt%Al-0.046wt%C普通鋼とFe-18wt%Cr-8wt%Ni-0.065wt%Cステンレス鋼をクラッドし、炭素量の変化をシミュレーションした。
(4)Fe-0.20wt%Mn-0.03wt%Si-0.027wt%Al-0.046wt%C普通鋼とFe-18wt%Cr-8wt%Ni-0.03wt%Ti-0.065wt%C ステンレス鋼をクラッドし、炭素量の変化をシミュレーションした。
また、このようなクラッド法ばかりでなく、溶射を用いた表面改質についても本研究手法の適用を試みた。その結果、溶射において表面層から炭素がマトリックス材に侵入し、界面における材料の硬化および割れの発生などが報告されていたが、そのような現象の回避の方法について考察できた。

研究成果

• [文献書誌] Ohtani: "Thermodynamic assessment of the Ni-Si system by incorporating ab initio energetic calculations into the CALPHAD approach"Computational Coupling of Phase Diagrams and Thermochemistry. 27. 161-168 (2003)
• [文献書誌] Ohtani: "Thermodynamic study of phase equilibria in the Sn-Ag-Bi-Zn quaternary system"Mater.Trans.. 45(印刷中). (2004)
• [文献書誌] Ohtani: "Thermodynamic study of the phase equiliria in the Sn-Ag-Bi-Cu quaternary system"Mater.Trans... 45(印刷中). (2004)
• [文献書誌] Ohtani: "Thermodynamic Analysis of the Ni-Si-Ti System Using Thermochemical Properties Determined from Ab Initio Calculations"Mater.Trans.. 45(印刷中). (2004)
• [文献書誌] Ohtani: "Phase Separation of the B2 Structure Accompanied by an Ordering in Co-Al and Ni-Al Binary Systems"Mater.Trans.. 45(印刷中). (2004)
• [文献書誌] Ohtani: "Effect of the Order- Disorder Transition of the bcc Structure on the Solubility of Be in the Fe-Be Binary System"Mater.Trans.. 45(印刷中). (2004)
• [文献書誌] Ohtani(分担執筆): "Intensive Handbook of Calorimetry and Thermal Analysis"Wiley(印刷中). (2004)