本研究では起電力法、化学平衡法ならびにクヌーゼン流出法により、ニオブおよびタンタルのシリサイドの標準生成自由エネルギーを実測することを当初目的とした。 起電力法:溶融リチウムケイ酸塩電解質を用いたシリコン濃淡電池をニオブーシリコン系に適用したところ、シリコンポテンシャルの実測に成功し所期の目的を達成した。タンタルーシリコン系については電解質構成成分と五酸化二タンタルが中間化合物を形成するため、所期の平衡関係が保たれないことが明らかになった。化学平衡法:銀-シリコン合金と金属-シリコン2成分系の2固相間のシリコン分配平衡実験を行なったが、平衡の到達に相当な時間を要し、実験手法として現実性に課題があると判断された。クヌーゼン流出法:特に起電力法で標準生成自由エネルギーが得られていないタンタル-シリコン系を主たる対象として実測を試みたが、装置上のトラブルから安定な蒸気圧が得られなかった。 研究計画遂行の初期段階において溶融リチウムケイ酸塩電解質を用いた起電力法について、その実験手法としての有効性が確認されたため、研究の目標に若干の修正を加えて、同実験手法をニオブ、タンタルと同様に耐熱性金属として広く利用されているモリブデンまたはタングステンとシリコンとの2成分系に発展的に適用することとした。これらの測定対象系についても成功裏に起電力測定を完了した。以上の実験結果として、2つのニオブシリサイド、2つのタングステンシリサイドおよび3つのモリブデンシリサイドの標準生成自由エネルギーの実測値を得た。さらに、得られた値に第3法則法を適用して、これらのシリサイドの298Kにおける標準生成エンタルピーを得た。
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