研究概要 |
自然状態では反転対称系のガラスに熱ポーリングを施すことで誘電体結晶と同様に、反転対称性を持たない微視的構造が形成される結果、二次非線形光学特性が出現する。溶融石英及び合成シリカガラスについて、二次非線形光学特性に及ぼす酸素欠陥、Na及びOH不純物の影響を調べた。二次非線形光学特性は0.06〜0.5mass ppm Naの範囲においてNaの存在量と関係があり、Naが多いほど熱ポーリング過程での直流電流が大きい値を示すことに対応している。さらに透過型電子顕微鏡による微細構造観察の結果、ガラス製造工程での原料の未溶解部と推定されるクリストバライト微結晶と熱ポーリング過程でのジュール熱により生成したα-石英微結晶の存在が観察された。しかし、その存在量は少なく、ガラス中の微結晶と二次非線形光学特性の関係は認められなかった。本研究によれば、溶融石英での二次非線形光学効果の発現には、熱ポーリングによるNaイオンの移動に続いて起こる空間電場の凍結が関係することを示唆する結果となった。 酸化物ガラスと比較して、共有結合性が強いため希土類の溶解性に劣る硫化物ガラスについて、希土類の溶解性を調べ、それを決定する因子を検討した。さらに新規系としてRS-Ga_2S_3(R=Ca,Sr,Ba)ガラスの物性と構造を調査した。同系ガラスは従来の硫化物ガラスと比較して、ガラス転移温度が550℃と最も耐熱性に優れる部類に属し、さらに最も短波長の300〜400nmに光吸収端を持つことが判明した。スパッタ法により希土類イオンドープSrS-Ga_2S_3系非晶質薄膜を作製し、フェムト秒レーザーによる光誘起構造変化を検討した。同薄膜はチタン:サファイアフェムト秒レーザーの基本波(800nm)と第二高調波(400nm)に対して透明であり、この薄膜に第二高調波の波長に吸収帯を有するSm^<2+>をドープすることで、フェムト秒レーザーの1パルス毎に対応し、照射部分に高さ100nm、幅20nmの凸レンズ状微細形状部の形成が可能であることを見出した。本手法には薄膜型或いは光ファイバデバイスの光学系などへの微小光学レンズ形成への適用が考えられる。
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