本研究では、非経験的分子軌道法によるダイオキシン(DD)の酸化物触媒分解機構の解明を目的として、まずダイオキシン類の酸化分解過程を明らかにすることを試みた。DDの分解経路は次の3経路によって行われると考えられる。すなわち(1)塩素の解離、(2)架橋酸素原子の解離、(3)ベンゼン環の開裂である。本研究の計算結果からこれらの反応は(1)>(2)>(3)の順で起こりにくくなると考えられる。本研究では特に(2)の架橋酸素原子の解離反応に着目してその酸化分解経路を明らかにした。具体的には、対象分子としてNCDDを選択し、酸素吸着位置の違いによるNCDDの酸化分解経路の変化について考察した。特に酸素吸着反応によりNCDDの平面性が容易に壊れるという計算結果より、電子状態ならびに吸着に対する軌道の推移からNCDD酸化分解経路の優先経路の算定を行った。続いて、ダイオキシンと触媒表面の相互作用の解析を行った。具体的には、既に反応経路が特定されているダイオキシン生成に対する銅触媒の詳細解析を行った。対象分子として六塩化ベンゼン、触媒モデルとしてCu5クラスターを用い、この反応では特に触媒上への分子吸着反応に着目した。この反応メカニズムを解析することはダイオキシンの分解触媒に対して有用な知見になると考える。この解析は特に電荷移動ならびに分子軌道論的観点からの解析を行った。その結果、ダイオキシンと触媒表面との反応、ならびにクラスターサイズに依存する反応との相関を明らかにした。
|