メカニカルアロイング(MA)法を利用して、Cr炭化物系硬質相とFe-Cr合金系の軟質相を超微細に混合、組織制御した新複相組織制御耐熱・耐摩耗複合材料を創製する。当面の適用対象としては、石炭焚き火力発電プラントや石炭ガス化炉等の灰処理部材や固気二相流での粉体摩耗配管を候補とし、摂氏800度を超える温度でも石炭灰等のアッシュエロージョンに耐えうる耐熱・耐摩耗複合材料を開発し、高温エロージョン摩耗試験により、その材料の実用化について評価する。 本研究では、低応力衝撃条件に対応した高温摩耗試験機を使用した。本装置は高温の粉粒体による摩耗を想定して、高温に保持した粒子層の中に試験片を埋没させて回転する粉体内回転法式である。試料ホルダーは高温で十分な剛性を持つ太さの耐熱ステンレス製である。試験片の形状は外径30mm(内径20mm)で高さ20mmの円筒状である。この試験片をホルダーの軸金にはめ込み、固定用のリングと下部の皿状のボルトで支持して試験に供した。試験に際しては、試料挿入前に試料ホルダーの代わりにこれと同様の形状の粒子層攪拌翼を用いて粒子層を良く攪拌し、槽内温度を均一化してから攪拌翼を試料ホルダーに付け替えて挿入した。摩耗粒子はシルバーサンド3号珪砂(粒径約2mm)を用いた。本試験機の試験温度は最高850℃で、最高試料回転速度は500rpmであり、この場合、試料の対粒子速度は3.3m/secである。その実験の結果、アブレッシブ摩耗において周速度が速いほど摩耗量が多くなる。また、アブレッシブ摩耗において材料が硬いほど摩耗量は減少する。また、基地中組織がオーステナイトの場合、オーステナイトがすべり摩耗によって、加工誘起変態を起してマルテンサイト組織になり摩耗が押さえられる。 以上の結果より、アブレッシブ摩耗試験機を常温で使用する場合は周速度、試験材料の特性(特に硬さ、組織)といった要素が重要になってくる。
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