研究概要 |
pH勾配を有する電気透析型反応器によりアミノ酸の分離を行う場合,基本技術としてバイポーラ膜による水解離現象およびイオン交換膜の競争透過を利用することから,今年度はバィポーラ膜における水解離速度,競争透過に与える操作条件の影響について検討を行った。 バイポーラ膜による水素イオン及び水酸化物イオンの生成速度を測定した結果,両イオンの生成速度は電流密度に比例して増加し,安定に酸・アルカリが生成できることがわかった。 次に,得られた結果を基に6室からなる電気透析槽にバイポーラ膜および陰イオン交換膜を組み込み,電気透析反応器におけるアルカリ側pH勾配の形成を試みた。その結果,イオン交換膜で仕切られた各室間には電解質の濃度に対応した任意のアルカリ性のpH勾配が形成され,その値は各室に存在する陽イオンの濃度で制御できることが明らかとなった。 また,装置内に形成されたpH勾配を利用し,アミノ酸の分離において難分離性を示す中性アミノ酸(アラニン,ロイシン,フェニルアラニン)の相互分離を試みた結果,弱アルカリ性のpH勾配を形成させることにより分離能が向上する結果を得た。 得られた結果を基にpH勾配の形成,ならびにアミノ酸分離に関するモデルを構築し解析を行った結果,計算結果と実験結果は比較的良好に一致し,反応器の設計・運転に関する情報を得ることができた。
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