研究概要 |
エチレングリコール類を用いた含浸型液体膜を、疎水性多孔質膜の表面に設置することで、キャリアガスを用いずに、蒸気・ガスの加圧・減圧透過分離操作が可能な液体膜を構成した。本研究課題ではこの液体膜をA:芳香族炭化水素の分離、B:エタノール/水蒸気系の分離、C:空気中の有機蒸気とにおい成分の分離、D:酸素/窒素分離、の各々の分離系に対して適用性を検討し、新たな分離プロセスの開発を目指した。 A:芳香族炭化水素の分離については、ベンゼン/シクロヘキサン系においてトリエチレングリコールがベンゼン選択性が10程度であること、この芳香族選択性が、KCL, AgNO3などの無機塩を液体膜に混入することにより、大幅に向上することを見いだした。さらに、混合蒸気成分であるガソリン蒸気について蒸気透過分離実験をおこない、この液体膜により99%芳香族蒸気を回収できることを示した。 B:エタノール/水蒸気系の蒸気透過分離については水蒸気選択性が大きく、透過性の大きい膜素材の開発を目標とした。その結果トリエチレングリコールに吸湿性の塩(LiBrなど)を混入することで、特にエタノール蒸気高濃度での水選択性が向上した。透過性については、未だ不十分で、薄膜化の検討が今後の課題である。 C:空気中の有機蒸気とにおい成分の分離については、実用化されているシリコーンゴム膜との比較で検討した。水溶性の有機蒸気(メタノールなど)やにおい成分はトリエチレングリコール液体膜が良い性能を示した。ベンゼン蒸気などの炭化水素蒸気については有機性を高めたトリエチレングリコールジブチルエーテルなどの液体が分離に効果的であることが見いだされた。 D:酸素/窒素分離については、ヘモグロピン、コバルト塩など酸素親和性の成分を混入して、酸素選択性の膜を開発することを目標に検討したが、成果は得られなかった。
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