研究概要 |
乳化重合を代表例とするナノ微粒化分散滴系ラジカル重合系では微粒化分散滴内で重合が進行する。この重合系ではラジカルの発生源が連続相、分散相のいずれにあっても微粒化分散滴へのラジカル侵入とそれからのラジカル脱出速度がその重合速度を規定するが、ラジカル発生源が微粒化分散滴内である場合の理論の確立とその実験的検証がなされていないことが、ナノ微粒化分散滴系ラジカル重合系の一般的理論体系化ができない原因であることが認識された。そこで、微粒化分散滴内で発生したラジカルの重合への寄与の程度を明らかにするため、微粒化分散滴の大きさを変えて重合実験を行うことを試みた。マイクロフルイダイザーを用い、オストワルドライプニング効果による滴径変化が無視できる水に不溶のモノマーを微粒化して分散滴の大きさの制御を試みたが、合一による滴径の経時変化速度が大きく、重合開始時の滴径を制御することはできなかった。そこで、滴径が増加しない高分子微粒子を乳化重合で作成し、それをモデルナノ微粒化分散滴と見なし、そこにモノマーを加えて行う、いわゆるシート乳化重合を行った。微粒化分散滴内でラジカルを発生させるため、油溶性開始剤の代表例である2,2'-アゾビスイソブチロニトリルを用いて重合を行った。得られた結果から、粒子内で発生したペアラジカルの大半は瞬時に二分子停止を起こし重合には殆ど寄与しないこと、また、ラジカルの脱出と停止の割合は微粒子径に依存することが示唆された。これらの実験結果から、微粒化分散滴内で発生したペアラジカル間の停止速度とそれらのラジカルの分散滴外への脱出速度の比が評価された。また、多量の乳化剤を加えてより微小なナノ微粒化分散滴(マイクロエマルション滴)を調製した。それを重合させて得られた微粒子の粒子径分布は、上述の知見を考慮した重合機構のモデルにより比較的良好に予測できた。
|