研究概要 |
1 熱力学的相平衡の測定 高分子としてポリエチレン(種々の分子量の物や、単分散度の高いメタロセン触媒のもの)を,溶媒として種々の溶解度パラメータを有するジフタル酸系のものを用い、高分子溶液のbinodal線をホットステージを備えた光学顕微鏡により求めた。さらに各系の結晶化温度をDSC測定のより決定した。さらに、高分子にシリカ超微粒子(一次粒子径:7nm)を添加した系についても相平衡関係を明らかとした。シリカの添加により、結晶化温度に変化はあまり見られなかったが、binodal線は低温側にシフトすることがわかった。 2 相分離過程の検討 相分離に伴う相の成長過程を追跡するため,準安定領域と不安定領域にクエンチされた溶液についての相分離過程を、速い初期の過程から遅い後期の過程に至るまで、ホットステージをセットした高分子フィルム光散乱装置により系統的に測定した。130℃/minの一定の冷却速度の条件下では、相分離はspinodal分解過程のより進行することがわかった。また、シリカの添加により初期構造の大きさが顕著に増大することがわかった。 3 TIPS法による非対称性平膜の作製とその構造評価 ホットステージを用い、キャスト溶液の片面で一相領域,他面で二相領域となる状態にクエンチし、非対称性膜を作製した。この場合には高温側で孔が大きく、低温側で小さいという構造であった。また、高分子溶液の上面のみから溶媒を蒸発させることで、高分子濃度勾配を形成させた手法によっても非対称性膜の作製を行った。シリカ微粒子添加系膜もこの方法により作製した。膜中のシリカ量を測定したところ、ほぼ定量的に膜内に残存することがわかった。得られた膜の透水量を測定した結果、シリカの添加は透水量を増大させる上で効果的であることがわかった。
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