研究概要 |
バイオソープションに用いられるバイオマスは,その種類によりイオン交換樹脂,活性炭,活性汚泥よりも回収目的とする金属イオンの吸着量が大で,かつ安価という利点をもつ。このバイオマスに分子インプリント法を用いて高い金属選択性をもたせるためには金属の吸着サイトを調べる必要がある。 微生物の中でも金属吸着能に優れている、糸状菌の一種であるRhizopus種のRhizopus oligosporus(以下R.oligoとする)は、インドネシアで食される大豆食品である"テンペ"の中に含まれており、様々な有用金属を生産する能力を有する。この微生物をR.oligoを金属吸着材料として再利用するために,その金属の吸着挙動を調べた。 液体培養したR.oligoに金属としてランタン,コバルト,および銅の濃度を変化させて吸着させた。金属の種類によってR.oligoへの吸着挙動は異なり、金属種によって菌体と相互作用する官能基が異なることが示唆された。また,いずれの金属種でも菌体1g当たり3.3mmolという,市販の金属回収材料と同等以上の吸着能をもつことが分かった。 菌体中の金属吸着に関与している官能基を調べるために,ランタンおよびコバルトの菌体への吸着に与えるpHの効果を調べた。pHが増加するに従い,金属吸着能は増加した。pH依存性から,金属は菌体にイオン交換作用で吸着してはいないことが明らかになった。この結果から,微生物の細胞壁の主成分であるキチンやグルカンなどに結合していることが示唆された。現在,この菌体に付加価値を与えるため,バイオマスの官能基を元にした金属に選択性をもつ修飾法を検討しているところである。また金属吸着能からの菌体の官能基の同定、さらにはその官能基を足掛かりにして、分子インプリント法による材料の創製へと研究を発展させる予定である。
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