吸着分離法は有力な酸素製造法の1つであるが、近年、さらなる省力化と低コスト化のために、高性能の空気吸着分離用吸着剤の開発が必要とされている。 本研究は、局所選択性の高い表面解析を基礎としたゼオライト系吸着剤の系統的改質により、高い空気分離特性を持つ吸着剤を開発し、それらを利用した高速空気分離プロセスを開発することを目的とするものである。当該年限に得られた結果を以下にまとめる。 1 金属イオンクラスター形成を利用したゼオライト表面の改質 非吸着性カチオンサイトを物理的に閉塞することを目的としてAgおよびCuイオンクラスターを低シリカFAUゼオライト(LSXゼオライト)のソーダライトケージ内に形成させ、さらにLi^+でイオン交換してLi-CuLSX、Li-Ag-LSXを調製した。また、それらの最適調製条件について探査した。 2 金属イオンクラスター含有LSXゼオライトの吸着特性 Li-CuLSXおよびLi-Ag-LSXの表面特性を解析するために、一酸化炭素およびメタンなどを吸着プローブ分子として、赤外分光法により吸着サイトの特性を評価した。その結果、銅クラスターイオンを含有したLi-CuLSXゼオライトのCO吸着性が通常のLiLSXと比べて約3倍向上し、サイトIIIへのLi^+の選択的導入が可能であることが明らかになった。またメタン吸着により、サイトIIIの静電場が通常のLi-LSXより大きいことが示された。これはD6Rやソーダライトケージに存在した銅クラスターイオンの効果と判断された。 3 空気分離特性の定量的評価 定圧型吸着量測定装置に加えて、質量分析計を付設した流通式吸着装置を製作し、種々の吸着剤のガス吸着分離特性の定量的解析を可能にした。その結果、Li-CuLSXが211Kの条件下で既存の分離用ゼオライトを上回る分離係数を与えることがわかった。
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