研究概要 |
有機塩素化合物は工業的な脱油脂やドライクリーニングなど幅広い分野で使用されている。しかしながら,近年,地下水や土壌などが有機塩素化合物に汚染されていることが指摘されている。有機塩素化合物は難生分解性物質であるために促進酸化(AOP)法が量も効率的かつ経済的な分解処理方法として用いられる。AOP法では,ヒドロキシラジカルの非常に強力な酸化作用を利用するが,ラジカルスカベンジャーや紫外線吸収物質の存在によって酸化速度が著しく低下する。そこで本研究では,エアーストリッピングや土壌蒸気抽出後の汚染された気体をラジカルスカベンジャーの存在しない液体中に通じることにより有機塩素化合物のみを吸収させ,即時に酸化分解することができるUV-バブルカラムリアクター(UV-BCR)を提案し,その設計指針および最適操作条件の検討を行った。本年度は,テトラクロロエチレン(PCE)を取り上げ,UV-BCRを用いた分解処理における操作条件,すなわちPCEや過酸化水素の初期濃度,温度,pHを変化させ,分解速度へ与える影響について検討した。また,PCEが分解されることによって生成する塩化物イオンの濃度を測定し,その値をPCE分解モデルから化学量論的に考察し,さらに塩化物イオンのヒドロキシラジカルスカベンジャーとしての効果についても検討した。その結果,特にPCE/過酸化水素の化学量論比がPCE分解速度に大きく影響を与えることがわかった。一方,PCE分解の初期段階で塩素原子がはずれて塩化物イオンが生成し,これらの蓄積がPCE分解速度に影響を与えることもわかった。中性および弱酸性条件下では塩化物イオンはヒドロキシラジカルにとってそれほど強力なラジカルスカベンジャーではないが,pHが2以下の酸性条件下では,PCE分解速度は大きく減少することから,系内のpHはできるだけ中性付近に保つ必要があると結論づけられた。
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