新しい機能性材料の開発は様々な分野で重要な課題であるが、特に不均一系触媒の開発においては、細孔構造や活性点構造が随意に制御可能な、全く新しいタイプの材料の創製が求められている。 本研究は、シルセスキオキサンの半籠状構造を基本骨格として活用して、要求される機能に応じた最適な大環状・籠状構造を有する有機・無機複合分子を合成し、さらにこれらを構成部位とするナノ制御有機・無機複合材料の創製・機能開発を行うことを目的とする。本研究の結果、今年度は以下の成果を得た。 (1)新しいタイプの4族遷移金属を含有するシルセスキオキサンの合成は、酸化触媒や重合触媒開発の観点から極めて興味深い。本研究では、種々の反応性置換基を併せ持つ、新規4族遷移金属メタロセン含有シルセスキオキサンの合成に成功した。また、ジルコノセン部位等が、ジシラノール基の保護基として機能し、従来合成が困難であったジシラノール類が効率よく合成できる手法を新たに見出した。また、本研究で合成したチタノセン含有シルセスキオキサンは、シクロヘキセンのエポキシ化反応に対して触媒活性を示したが、アリルシリル基の導入によって触媒活性がさらに向上した。現在、アリルシリル基の効果の原因について、詳細な検討を行っている。 (2)我々は、金属含有シルセスキオキサンを前駆体とする、新しいタイプの多孔質固体酸触媒の創製を検討している。本研究では、アルミニウムをはじめとする種々の金属種を有する新規シルセスキオキサン合成し、さらに、これらを723Kから923Kで焼成することによって、約5.1Å径の均一に制御されたミクロ細孔のみからなり、330〜520m^2g^<-1>の比表面積を示す多孔質酸化物を得た。金属種や有機置換基の差異は、触媒活性や固体酸性等の化学的な物性には大きな影響を及ぼすが、細孔構造には殆ど変化を及ぼさないことが判明した。また、細孔構造構築過程について詳細に検討し、有機置換基由来の炭素質の酸化分解によってミクロ細孔が形成されることが推察された。
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