研究概要 |
鹿角芝(Ganoderrma lucidum)はサルノコシカケ科のキノコである。このキノコは光照射下で生育すると、扇形のいわゆる「サルノコシカケ」の形態となるが、暗所で生育すると、傘を形成せず鹿の角状に分岐する。このように光の有無で全く異なった形態を示す。このように形態形成に関わる生体分子反応が光制御を受ける現象は極めて興味深く、光制御機構の応用が期待される。平成14年度の研究では、このキノコの光スイッチング機構を明らかにすることを目的として、鹿角芝の菌糸体培養を行い、菌糸体増殖とタンパク合成に及ぼす光の影響を検討した。 1)菌糸体の培養条件の検討 鹿角芝の菌糸体培養に適する培地の組成は、Malt extract 1%, Yeast extract 0.4%, Sucrose 1%が適していた。菌糸体の生育は、寒天固体培養及び液体培養のいずれにおいても良好であった。培養温度は25℃が適していた。 2)菌糸体の増殖に及ぼす光の影響 寒天固体培地を直径10cmのシャーレに作製し、中央にコルクボーラーでくり抜いた鹿角芝菌糸をおき、暗培養と明培養を行った。明培養は20W蛍光灯(×2)で40cm離れたところから、光を照射した。培養の結果、増殖に明確な差異が現れた。光を照射すると、菌糸体の増殖は顕著に抑制された。培養の途中で明培養から暗培養に切り替えると、暗培養になったときを境に増殖速度が速まった。液体培養においては、光の影響は明確に現れなかった。 3)光応答性発現タンパク質の解析 寒天固体培地上で、鹿角芝菌糸を明条件及び暗条件で培養した。得られた菌体を回収、破砕し、タンパク質を抽出した。タンパク抽出液をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動法で解析したところ、分子量45,000付近に明条件において明瞭に現れるタンパクバンドが確認された。
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