当該研究は、フェノール処理などの操作を不要とすることにより、組換えDNA実験のグリーン化を進めることを目指し、熱失活性のApase、RNase A、制限酵素の開発を目的とする。また、通常低温で行われる連結反応の効率化を目指し、低温において高い活性を有するDNAリガーゼの開発を目的とする。 SIB1株由来のAPaseの諸特性を解析したところ、至適反応温度は約40℃であり、大腸菌由来酵素と比較して約20℃低温側にシフトしていた。また安定性も大腸菌由来酵素が80℃で1時間処理しても60%の活性を保持するのに対して本酵素は80℃で5分処理するだけで速やかに失活した。本酵素は40℃での酵素反応において大腸菌由来酵素と比べて5倍以上高い触媒効率を示し、20℃でも十分な活性を維持していることがわかった。 低温菌DNAリガーゼについては、近縁でゲノム配列の解読されているS.oneidensisのDNAリガーゼの遺伝子の配列をもとにPCRプライマーを合成し、SIB1株のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った結果、600bpの断片が増幅された。この断片の塩基配列を決定したところ、そのコードするアミノ酸配列は、S.oneidensisのDNAリガーゼと77%の同一性を示し、SIB株のDNAリガーゼ遺伝子の一部であることがあきらかとなった。 RNase Aおよび制限酵素Bg1IIの熱失活性変異体を取得するために、これらの酵素遺伝子に6×Hisタグ配列を付加し、M13ファージのpIIIコート蛋白質遺伝子のN末端に挿入した。構築した遺伝子をもつ大腸菌にヘルパーファージを感染させ、ファージ粒子を調製し、抗M13抗体を用いたELISA法により、Ni-NTAプレートへの結合を調べたが、プレートへの特異的結合はみられなかった。したがって、酵素がファージ上へうまくディスプレイされていないと考えられる。
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