研究課題
バクテリアが周囲の菌体数を感知し応答する、細胞間情報伝達機構、遺伝子発現制御機構であるクォーラムセンシングが、病原性の発現やバイオフィルム形成などへ関与していることが明らかとなってきた。この機構には、オートインデューサーとよばれるシグナル物質が重要な役割を果たしている。バクテリアのクォーラムセンシング機構の阻害物質を開発する研究を進めるために、この機構に関わるオトインデューサーおよびその構造類似体の化学合成を種々行なった。グラム陰性細菌の天然のオートインデューサーとして同定されている、N-アシル-L-ホモセリンラクトン類を、L-ホモセリンラクトンと種々の鎖長の脂肪酸とを、水溶液中で脱水縮合剤である水溶性カルボジイミドを用いて合成した。一方、非天然のD-ホモセリンラクトン誘導体も同様に合成した。精製後、合成した化合物をNMR、MSスペクトル、HPLC、旋光計などにより解析した結果、光学純度の高い化合物が得られたことがわかった。また、この過程で光学分割カラムを用いたD、L体の分離方法の確立が行なえた。バクテリアとして緑膿菌を用いたバイオアッセイの結果、化学合成したL体は天然物と同様の活性を有していることが確認され、一方、非天然のD体は、活性を全く示さず、また、L体の阻害剤としても機能しないことが明らかとなった。今後、オートインデューサー認識機構の検討を生化学的な手法も交えて行なっていく予定である。一方、オートインデューサーの構造類似体として、光学活性部位を有しない、フラン環、シクロペンタン環等を有し、かつアシル鎖を有する化合物の合成の検討を現在シリーズで進めていく予定である
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