研究概要 |
本研究の目的は,申請者が提案する高速・高倍率濃縮分離システムの創出によって環境水(海水,湖水,河川水,雨水,地下水等)や大気中に存在する外因性内分泌撹乱物質(環境ホルモン)の定量分析を行うことにある。3ケ年の研究期間で,この研究目的を達成する。 初年度に当たる本年度は,下記の事項を検討した。 1.極性溶媒中で起こる新規相分離現象の検討 新しい均一液液抽出法を開発するには,溶液中の新規な相分離現象の発見が前提である。申請者はアセトン/微量クロロホルムの均一混合溶媒中への水の添加による簡便な相分離現象に着目した。この基礎的検討として,析出相の溶解度,目的溶質の濃縮率,分相の速度等を検討した。また,この溶液系の因子の最適化により,新しい均一液液抽出法を確立した。 2.均一液液抽出法による濃縮/高速液体クロマトグラフィー分析システムの開発 次に均一液液抽出法と高速液体クロマトグラフィーとの融合による高感度分析システムに関する検討を行なった。特に,濃縮・検出システムに適合する溶媒系の選択,及び蛍光検出/高速液体クロマトグラフィーの諸条件の検討を行い,社会的分析ニーズの高い環境ホルモン(多環芳香族類)についての分析を行なった。多環芳香族としては,ベンズ(a)ピレン,ピレン,ベンズ(e)ピレンなどを検討し,数pptレベルの分析法を開発した。これは,ベンズ(a)ピレンを例にとると環境下限基準25pptを十分下回る方法であり,今後の環境試料への適用が期待される。
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