研究概要 |
芳香族有機塩素化物の一種であるダイオキシンやPCBを無害化するには脱塩素化する必要がある。常温・常圧の穏和な条件で脱塩素化を行うには電解還元が有力である。電解還元の速度や反応選択性には、電極金属の種類のみならず電極表面の構造も大きな影響を及ぼす。高反応速度・低消費エネルギーで脱塩素化を行い得る電極触媒開発の基礎として、表面原子配列が規制された単結晶電極を用いて、芳香族有機塩素化物の脱塩素化反応を活性化する表面構造を原子レベルで検討した。 前年度は単結晶作成が容易な白金の基本指数面(Pt(111)、Pt(100)、Pt(110))の単結晶電極上で、芳香族有機塩素化物としては、最も単純な構造のクロロベンゼンを採用し、溶解度が高いアセトニトリル中でナフタレンをメディエータとしてクロロベンゼンをマクロ電解した。いずれの面でもベンゼンが主生成物として得られ、ベンゼンの生成速度は、Pt(111)<Pt(100)<Pt(110)の順序となった。平坦なテラスのみからなる、Pt(111)とPt(100)電極はクロロベンゼンの脱塩素化活性が低く、ステップを持つPt(110)の活性が高い。このことは、クロロベンゼンの脱塩素化に対して有利な反応場はステップであることを示唆する。 今年度は、有機塩素化物の脱塩素化に有効であることが知られている銀単結晶(Ag(111),Ag(100),Ag(110))に研究を展開した。Ptと異なり、メディエータを用いた脱塩素化反応速度には面方位依存性が現れなかった。メディエータを使用しないで、クロロベンゼンの脱塩素化を行ったところ、ベンゼン生成速度にはAg(110)<Ag(111)<Ag(100)の序列が得られた。この序列はPtと異なり、クロロベンゼンの脱塩素化には表面構造のみならず、金属の種類も影響を及ぼすことも明らかとなった。
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