研究課題
基盤研究(C)
液晶の次世代の表示素子である有機ELは、フルカラーの商業化が進展するなかで、用いられる材料のさらなる高性能化と長寿命、安定性が求められている。このため、本研究は、耐熱性および非晶質性に優れた材料を開発すべく、安定な芳香族化合物を三次元的なスピロ構造に組み入れた新規物質を開発してきた。審査中の論文を含めて、冊子体の論文成果について順に述べる。1.安定で耐熱性に優れるホール輸送材として、スピロ炭素を3つ持つトリスピロの新たな物質を合成できた。この基本骨格である炭化水素は新規物質であり、今後の耐熱性電子材料の基盤物質として利用されよう。また、得られたホール輸送材は、ガラス転移点170度Cもある高い値(分子量1796で真空蒸着できる世界記録か)を示し、なおかつ優れたEL特性を示した。我々の分子設計の考え方の正しさを例証できた。2.スピロ構造を構築するためのフルオレンのアセタールの新合成法を見いだした。この物質は、教科書的な従来合成法では作れない。有機ケイ素化合物と電気化学法の組み合わせでのみ達成できた。3.スピロ構造を進化させたプロペラン構造を持つ耐熱性ホール輸送材を合成できた。ホール輸送材単位を1つ、2つ、3つもつ系を考案し類例のない試みで、我々の分子設計、すなわち耐熱性の炭化水素コアと非晶質性のための官能基を周辺に配置する考え方は、作業仮説から理論として認められたい(印刷中)。4.耐熱性、非晶質性の実現に他の方法はないかとして、あまり省みられなかったシクロ重合の新しい方法など合成でき、いくつかのオリゴマーでも耐熱性はあがることがわかった(審査中)。
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Bull.Chem.Soc.Jpn. 79(印刷中)
Bull. Chem. Soc. Jpn. 79, (in press)
J.Mater.Chem. 15
ページ: 2393-2398
J. Mater. Chem. 15
Electrochemistry 72
ページ: 855-857