研究概要 |
本研究においては次のプロジェクトについて研究を行った。 (1)芳香族性に関する新しい指標:芳香族性に対し新しく指標(IDA)を提唱し、その妥当性を検討した。検討事項として(a)種々の六員環化合物に対する芳香族性の違い。(b)小さな環が付いたベンゼン環の芳香族性、すなわMills-Nixson効果に対する応用。(c)芳香族性についての(4n+2)π則の検討。(d)オルト,メタ、パラの3つの異性体を持つベンザインの芳香族性の違い。以上の研究結果から新しく提案した芳香族性に対する指標は非常に有効であることが明らかになった。 (2)Diels-Alder反応機構:Diels-Alder反応に関し協奏的機構と段階的機構について調べた。特に段階的機構で反応が起こる可能性について、ブタジェンとエチレン分子の反応を基本とし、その置換基効果、及びヘテロDiels-Alder反応について検討した。この結果から電子論的に段階型で起る反応機構が存在することを指摘した。 (3)1、3-双極子付加反応機構:この反応機構に対し3つのメカニズムが存在することを指摘し、各機構に対する起因を明らかにした。 (4)Cope転移反応機構:この反応に関し,協奏的反応機構とバイラジカル中間体を経由する段階的反応機構が知られているがこのメカシズムを明らかにし,置換機による反応制御について調べた。 (5)ペリ環状反応と擬ペリ環状反応:Heptatetraene類似体に対する分子内環化反応についてその反応機構をCILC解析法を用いて調べた。その結果、反応に伴う軌道の相互作用においてペリ環状反応と擬ペリ環状反応の間には明確な違いがあることを見いだした。
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