1.希土類イオン交換ゼオライトを用いたエネルギー移動の研究 電荷補償陽イオンをTb^<3+>などの希土類イオンに交換したY型およびL型ゼオライト細孔内に取り込まれた芳香族分子を励起して、希土類イオンにエネルギー移動がおこる過程を希土類イオンの時間分解発光測定により観測した。その結果、吸着ゲスト分子やゼオライトホストの種類の違いにより発光増幅率が著しく異なること、L型の場合エネルギー移動速度が非常に速いことなどがわかった。そして、時間分解発光の速度論的解析によりエネルギー移動の速度定数を決定することができた。 2.蛍光顕微鏡を用いたゼオライト粒子間の分子移動および化学反応の距離・時間依存性の視覚化の研究 蛍光顕微鏡を用いてゼオライト粒子に吸着された有機分子の吸着状態や拡散運動とそれに基づく化学反応を調べることを目的として研究した。精密な分子移動の観察をおこなうため、少数のゼオライト粒子を基盤に配置する方法の開発、発光の時間・空間的変化の観察をおこなった。その結果、結晶同士が接触した状態で室温でも分子の移動や移動の結果としての反応が観測できることがわかった。移動の時間変化および距離依存性も観測された。たとえば、chrysene(Chry)/Na^+-XからTl^+-XへのChryの移動やChry/Na^+-XとTCNB/Na^+-Xとを接触させた場合のChryの移動によるCT錯体の形成が観測された。このことは結晶同士が接触した状態では分子は細孔間移動と同様のメカニズムで結晶間を移動することを示唆する。さらに、Chry/Na^+-XとTCNB/Na^+-Yとを接触させた場合TCNBの移動が観測された。ゼオライトの化学的性質が吸着分子の細孔間移動に影響を与えているものと思われる。以上、精密観察により、結晶間分子移動の方向性がゼオライトの性質と結び付けられることがわかった。
|