研究概要 |
近年,繊維状の無機粒子は発ガン性が危惧されており,その代替材料が強く求められている。このため,本研究では健康被害の恐れがない板状の粒子形態に着目し,製造原料の資源量や使用後における廃棄処理を考慮した場合に環境への負荷が低いアルミノケイ酸カルシウム板状粒子の合成法を開発する計画を立てた。平成14年度は中間体である板状構造を持つCa-Al系硝酸型ならびに塩化物型層状複水酸化物(LDH)の合成を粉末生石灰とアルミン酸ナトリウム溶液を原料とする新しい方法によって試み、その最適合成条件を得るとともに,少量の陰イオン界面活性剤を添加することによりアスペクト比の大きい(約60)LDH大型粒子を得ることに成功した。平成15年度はこれらの結果をもとに,Ca-Al系硝酸型LDHの水熱処理ならびに生成LDHのケイ酸処理-加熱処理を行い,次の成果を得ることができた。 (1)Ca-Al系硝酸型LDHをオートクレーブ中、200℃で0.5〜2時間水熱処理を行うことにより,粒子径10〜20μmのLDH大型板状粒子(d_<003>=0.87nm,アスペクト比=約60)を合成することができた。 (2)Ca-Al系硝酸型LDHを水ガラスの希薄溶液で処理(50℃,24h)することにより,ケイ酸イオンをLDH層間に取り込んだLDHならびに粒子表面にケイ酸イオンが付着したLDHの混合物が得られた。 (3)このLDHを900℃で加熱することにより,アルミノケイ酸カルシウムGehlenite(Ca_2Al_2SiO_7)やケイ酸カルシウムWollastonite(CaSiO_3)の結晶粒子が得られた。 (4)これらのカルシウム塩は本来の板状形状を保持していることが明らかとなった。 以上の結果から,新規合成法によりアスペクト比の大きなアルミノケイ酸カクシウムの大型板状粒子を合成することが可能となった。
|