研究概要 |
1.平成14年度の研究目的・計画で研究対象としたビーライト(Ca_2Sio_4固溶体)に加えて,セメントクリンカー中においてビーライトと普遍的に共存する代表的なセメント鉱物であるフェライト相(Ca_2Fe_2O_5-Ca_2Al_2O_5固溶体)とアルミネート相(Ca_3Al_2O_6固溶体)についても,結晶構造と相転移温度に及ぼす固溶元素の影響を明らかにすることができた.すなわち(1)ビーライトにおいては,置換反応に寄与する結晶学的な席(site)の違いに応じて,固溶元素を3種類に分類し,そのイオン半径が転移温度の低下を本質的に決定していることを明らかにした.さらに(2)フェライト相では,化学組成(Al/(Al+Fe)比の値)を実験変数とし,高温X線回折法を用いて転移温度変化と相組成変化を求めた.また(3)アルミネート相では,置換元素として最も重要なNaとSiについて,固溶形式を定量的に明らかにすることができた(以上の成果は2002年と2003年の論文で発表済).さらに(3)においては、セメント中で一般的に存在する微量元素(MgとK)も含めた置換固溶形式の議論も行った(投降中).今回の研究で明らかにすることができた微量・少量元素の固溶形式は,ビーライト,フェライト相とアルミネート相の生成環境に関する情報を記録していることから,来年度の研究課題としての熱履歴を演繹するための方法論に関し,きわめて重要な知見を与える. 2.固溶元素濃度の比較的高いビーライトを,1500℃から除冷することで再融反応を起こし,10μm以下の液滴が均一に分布する"再融ビートライト"を得た.これを顕微ラマン分光法とEPMAによって調べ,(1)離溶した液相が常温でガラス状態であること,(2)元のビーラィトに固溶していた元素に著しく富むこと、を明らかにした.離溶した液相は、ビーライトセメントの水和活性を著しく高めることが期待されることから、来年度の研究を進めるための基礎的な知見を得ることができた.
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