本申請の平成14年度の研究計画にも記述したように、本年度の主目的は非アパタイト系リン酸カルシウム(リン酸カルシウム、リン酸1水素カルシウム、リン酸2水素カルシウム)による重金属の回収挙動を検討した。リン酸カルシウムは鉛カチオンを回収することができ、その回収能はカルシウムヒドロキシアパタイトを超えた。しかし、鉛の回収には長時間が必要な上に、鉛カチオン以外の重金属カチオンの回収はできなかった。リン酸カルシウムの場合と同じ条件においてリン酸カルシウムの代わりにリン酸2水素カルシウムを用いた場合、鉛カチオンの回収は30分で完了し著しい回収能を示したが、この場合も他のカチオンの回収はできなかった。一方、リン酸1水素カルシウムを用いると30分で鉛カチオンを完全回収できるとともに、Cd^<2+>、Co^<2+>、Cu^<2+>を30分間で83、50、45%回収でき、様々な重金属の回収能があることが知られていたカルシウムヒドロキシアパタイトの交換活性を著しく凌ぐことが明らかになった。リン酸1水素カルシウム(CaHPO_4)による重金属の回収がイオン交換機構で進むならば回収体の構造は、重金属をMで表すとMHPO4となるはずである。しかし、回収体の構造は溶夜のpHによって大きく異なり、また上記のように溶解度の大きなリン酸水素カルシウムの方が回収能が高いので、本研究の発想のきっかけとなった溶解沈殿機構で回収が進んでいることを明かにできた。また、研究成果で示しているように本回収を応用した新規無機材料合成方法の開発や回収固体の触媒への展開を図ることができた。来年度は申請時の計画とともに本年の具体的な成果に基づいて安価な回収剤の可能性を探るため、カルシウム以外のアルカリ土類リン酸塩、硫酸塩、アルカリ金属リン酸塩の回収能を検討したいと考えている。
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