研究概要 |
三年計画の二年目の昨年は、スルホン化シクロデキストリンよりも負電荷密度が小さく、薬物のDDS carrierとしての実用化の可能性が最も高いといわれているSBE7-β-シクロデキストリンを用い、ハイドロタルサイトとの複合体の合成条件の検討および得られた複合体のキャラクタリゼーションを行った。層間距離は、2.20nmで、シクロデキストリンは、分解を受けることなく層間に保持されていることが、NMR, Raman, FT-IRなどの結果より明らかとなった。これらのことからシクロデキストリンは、その空洞をハイドロタルサイトの層間の隙間の方に向けた構造をとっており、徐放性製剤のホストとして適した構造の複合体の合成に成功した。 三年計画の最終年度の本年は、得られた複合体へのモデル薬物の包接実験を行うとともに、その徐放性について検討した。モデル薬物としてプラゾシンおよびテストステロンを用いて以下の結論を得た。 1)モデル薬物の導入は、SBE7-β-シクロデキストリンに包接させてからインターカレーションする方法とハイドロタルサイトヘインターカレートされたSBE7-β-シクロデキストリンへ包接する方法のいずれも可能であった。その際、SBE7-β-シクロデキストリンの濃度や反応溶媒を変えることのより複合体中のモデル薬物の量および存在状態を変化させることができることが明らかとなった。 2)徐放特性を調べるために水および日本薬局方第二液中へのモデル薬物の溶出挙動を検討した。その結果、ハイドロタルサイト層間に存在するSBE7-β-シクロデキストリンの量を変えるとモデル薬物の溶出挙動が大きく変化することがわかった。特に、SBE7-β-シクロデキストリン最大量までインターカレートした複合体で、かなりの遅延放出効果が得られることが明らかとなった。
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