研究概要 |
芳香環部位とスクアリン酸部位がメチン基を介さずに結合した新規セミスクアリン酸類をチタニア薄膜として有機太陽電池の増感剤として評価した。合成は、対応する芳香族アミン類とジクロロスクアリン酸を反応させて、ジクロロセミスクアリン酸を得、次に、加水分解することでセミスクアリン酸を低から中程度の収率で得た。電気化学的な測定によって、これらの色素は,、チタニアへの電子注入と電解質からの電子を受容が熱力学的に可能であることが確認された。これらの色素を用いて、チタニア薄膜を作成し、増感剤としての評価を行った。その結果、次の知見を得た。 1)窒素上のアルキル基が長くなると変換効率が高くなったことから、チタニア上での配列が重要であること、2)蛍光強度が高い順に変換効率が高くなったことから、蛍光強度の高い化合物を合成する必要があること。3)エタノールへの溶解性の高い色素のほうがより高効率の薄膜が得られる傾向にあること。これらの結果は、平成14年12月5日にDyes and Pigmentsに、3-Aryl-4-hydroxycyclobut-3-ene-1,2-diones as sensitizers for TiO_2 solar cellと題して投稿した。平成15年3月13日現在で審査中である。 次に、ペリレン-3,4-ジイミド類の酸化亜鉛への増感作用について検討した。イミド上に4-スルホフェニル基や4-スルホナフチル基を導入したが、研著な増感効果が得られなかった。しかし、ペリレン-3,4-無水物は、IPCEで61,6%(428nm)を示したことから、これら誘導体が増感剤として応用可能との感触を得ている。現在、光捕集効果を有すると考えられるベンジルデンドロンをペリレン環へ導入中である。 近赤外領域での増感作用が期待されるヘプタメチンシアニン類の酸化亜鉛への増感作用についても検討している。これら色素は、800nm付近に最大吸収を示すこと、大きなモル吸光係数を有すること、蛍光化合物であることから増感剤としての応用が期待される。種々の複素環骨格を検討したところ、インドレニウム誘導体が最も良好な結果を示した。分子中央でのアンカー部位には、2-カルボキシフェニル基が最も良い結果を与え、IPCEは4.17%(804nm)であった。 更に、新しい骨格の増感剤へのスクリーニングを行っている。
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