研究概要 |
N-メトキシ-N-メチル-2-ブロモ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパンアミドを調製し、これにジクロロメタン中それぞれ1.2当量のルイス酸および1.2当量のトリフェニルホスフィンの存在下に、芳香族アルデヒド、脂肪族アルデヒドあるいはα,β-不飽和アルデヒドを室温で24時間作用させると、対応するα-フルオロ-α-トリフルオロメチル-β-ヒドロキシアミドが高収率でかつ高エリトロ選択的に(erythro:threo=85-96〜15-4)得られることを見出した。各種のルイス酸を用いたが、チタン(IV)イソプロポキシドが最も良好な結果を与えた。また、トリブチルホスフィンやトリエチルホスファイトのような、トリフェニルホスフィン以外のリン化合物では反応はうまく進行しなかった。この反応はチタン(IV)イソプロポキシドの使用量を1.2当量から0.1当量に減らしても効率良く進行し、対応するβ-ヒドロキシアミドを高エリトロ選択的に与えた。一方、トリフェニルホスフィンの使用量を少なくすると、反応は完結せず、原料のブロモアミドが相当量回収されることもわかった。 また、2-ブロモ-2,3,3,3-テトラフルオロプロパン酸ベンジルと光学活性なスルフィンイミンとを、亜鉛存在下、テトラヒドロフラン溶媒中で反応させたところ、高収率かつトレオ選択的に対応するα-フルオロ-α-トリフルオロメチル-β-アミノエステルが得られた。得られたカップリング生成物のトレオ体とエリトロ体はそれぞれ非常に高い光学純度であった。次に、このベンジルエステルと様々な光学活性イミン類との亜鉛を用いたカップリング反応を詳細に検討した。その結果、(S)-フェニルエチルアミンから調製したイミンはほとんど反応しなかったが、アミノ酸から調製したイミン、(L)-バリンメチルエステル由来のイミンはベンジルエステルとわずかに反応し、少量のβ-アミノエステルとともにβ-ラクタム誘導体を与えた。(L)-フェニルグリシンメチルエステル由来のイミンはベンジルエステルと良好に反応し、α-フルオロ-α-トリフルオロメチル-β-アミノエステルを良い収率で与えた。この場台、エリトロ体とトレオ体の選択性はほとんど認められなかったが、それぞれの異性体が高ジアステレオ選択的に得られることがわかった。 以上、本研究で得られた多くの知見は、今後、有機フッ素化学をはじめ一般有機化学や合成化学において大いに役立つものと期待される。
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