交付申請書に記載したように、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、チオフェン骨格を含む一連のヘテロ芳香族基質を調製した。まず、パラジウム触媒存在下、単純なチアゾールと芳香族ハロゲン化物との反応を検討した。触媒の配位子に立体的にかさ高い三級ホスフィンを用いると、助触媒を加えなくても効率よく反応が進行し、2位と5位が選択的に置換されたジアリール化物が良好な収率得られることを発見した。ベンゾチアゾールも2位で置換が進行したが、反応効率の低下がみられたため、ここで助触媒の検討を詳細に行った。その結果、通常の三級ホスフィン配位子を用いた場合と同様に、かさ高い配位子を用いた場合でも1価銅塩の添加が有効であることがわかった。次いでチオフェン類の反応を検討したところ、電子吸引基を持つ基盤で効率よく置換反応が進行し、過剰量の芳香族ハロゲン化物を用いることにより、アリール基が三つまで導入でき、さらにπ共役の広がった化合物が得られることがわかった。興味あることにチオフェンカルボアミド類の反応では脱カルバモイル化がおこり、形式的にカルボアミド基がアリール基で置換されたトリアリールチオフェンが良好な収率で生成した。そこでチアゾール、オキサゾール、イミダゾールのカルボアミド誘導体を両様に処理したところ、前二者で同様の反応が進行することがわかった。特にチアゾール誘導体で高い生成物収率が得られた。オキサゾールやイミダゾール誘導体で反応効率が下がる要因を今後検討する必要がある。
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