研究概要 |
昨年度の検討において、パラジウム触媒を用いたチオフェンやチアゾールなどの五員環ヘテロ芳香族化合物の芳香族ハロゲン化物によるアリール化反応で、触媒の配位子としてかさ高い三級ホスフィンが有効であることを見出した。そこで、本年度は新たにいくつかのホスフィン配位子を調製および購入し、反応の促進効果を検討した。その結果、ホスフィン上に少なくとも二つのかさ高いアルキル置換基を有することが反応促進に必須であることがわかった。一方、反応溶媒の極性効果は複雑で、ヘテロ芳香族化合物上の置換基によって、低極性の芳香族溶媒と極性のアミド系溶媒を使い分ける必要があることが明らかとなった。 上記の知見をもとに、チオフェン、ビチオフェン、チアゾール、フラン、オキサゾール類のアリール化反応を行い、これらの母核上に二つないし三つのアリール基が置換した一連の化合物を合成した。これらの化合物は、有機発光材料や電子伝達材料として応用が期待される。そこで、合成した化合物のうち代表的なものの吸収および発光スペクトルを測定した。興味あることに、5,5'-ジアリール-2,2'-ビチオフェンの3および3'位にシアノ基を有する化合物が、その置換基によりねじれが生じるにもかかわらず、アリール基の種類によっては40%以上の蛍光量子収率が得られることを見出した。一方、三つのアリール基が置換したチオフェンおよびチアゾール類の蛍光量子収率は10%以下と低い値を示した。
|