シャペロニンGroELのサブユニットにヒスチジン六量体を導入した変異体を調製した。導入位置は、内部空孔に位置するC末端とし、ヒスチジン六量体が空孔内に集中することで、金属イオンを空孔内部に集積化することを期待した。 調製した変異体(His-GroEL)がHis-tag精製用カラムにほとんど吸着されなかったことから、ヒスチジン六量体が外部に露出しているのではなく、空孔内に格納されていることが強く示唆された。さらに、TEMおよび光散乱による解析の結果から、His-GroELは、天然のGroELと同様に筒状の14量体であることが分かつた。この変異体に、二価の銅イオンを加えたところ、1つのHis-GroELあたり、およそ10原子の銅イオンが取り込まれることが分かった。加える銅イオンの量を検討した結果、ほぼ10当量加えると、そのほとんどがHis-GroELに取り込まれることが分かった。天然のGroELでは、取り込まれる銅イオンの数がほぼ1原子程度であることから、10個の銅イオンがヒスチジン六量体に配位することで、空孔内に集積化されたと考えられる。さらに、銅イオンを集積化したHis-GroELは、アスコルビン酸の酸化を効率的に進めることが分かった。これは、シャペロニンに触媒活性を与えた最初の例である。 以上のように、シャペロニン変異体His-GroELを利用して、新規機能材料の構築に成功した。
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