環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CD)を二量化し、連結した2つのCD空洞に協同的に基質を包接させることにより、高活性で基質選択的な触媒反応を起こさせることが可能であることを、これまでに見出している。 この協同作用の強度を、周囲の環境変化にシンクロナイズさせて変化させることができれば、効率的な物質輸送システムを構築することが可能である。 すなわち、協同作用により基質結合能を強化するばかりでなく、周囲の環境変化にシンクロナイズさせてその協同作用強度を変化させることが可能な官能基を導入した機能性ホスト分子を構築し、特定の分子と強く結合するばかりでなく、目的の場所で結合していた分子を速やかに放出できる効率的な物質輸送システムを構築することが本研究の目的である。 昨年度合成したキャリアー分子の物質輸送特性を引き続き検討した。そして、これまでの研究成果を基に、CDの1級水酸基側を疎水化した後に、2級水酸基側でCDを二量化し、さらに、2級水酸基側に多数のアミノ基を導入し、pH変化により基質結合能を変化できるキャリアー分子の合成を行った。同様に、多数のカルボキシル基を有するキャリアー分子の合成も試みた。得られたキャリアー分子の結合能のpH依存性について検討を行い、pH依存的な結合特性の確認をし、周囲の環境変化にシンクロナイズした物質輸送システムの可能性を確認した。
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