最近、環境化学あるいは医療分析の分野において、水溶液中に溶解している微量のアニオンを簡便かつ選択的に分析する技術の開発が求められているが、水溶液と膜の界面で実用にたえる錯形成能を有する受容体は合成されていない。このような観点から、本研究では、ベンジルエーテル型デンドリマー構造によって形成される疎水空間を利用するという、これまでまったくない設計指針に基づいて受容体を分子設計・合成し、それを用いたイオン選択電極を作成しその機能を評価することを目的として研究を行った。また、同じ原理に基づき、ケイ光をシグナルの読み出し方法とするフェニルアセチレン型デンドリマーの合成と機能について研究した。 まず、ベンジルエーテル型のデンドリマーの合成については、コアにチオ尿素基を有するデンドリマーの第1〜4世代までの合成を達成した。それらの非極性溶媒中における吸収スペクトルに基づき、第4世代になることによってコア部の発色団近傍の微視的環境が変化することを確認した。次に、非極性溶液中でのリン酸イオンとの錯形成について検討したところ、立体障害の増加とともに錯形成能は小さくなるが、その差はあまり大きくないことがわかった。均一溶液中でのこれらの情報に基づき、イオン選択電極への応用について検討している。 フェニルアセチレン型デンドリマーについては、コア部の疏水性を向上させるため、立体的に混み合った構造を有するヘキサエチニルベンゼンをコアとするデンドリマー構造の効率のよい合成法を開発した。この方法を用いたデンドリマー型レセプターの合成について検討している。
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