研究概要 |
遷移金属-炭素結合を有する高反応性中間体の反応性を制御することにより、多くの有用な合成反応が開発されてきた。本研究では、これまでに研究例の少ないπ-アリルイリジウム中間体とイリダシクロペンタジエン中間体に重点を置き、それらの中間体を経由する高選択的合成反応の開発を行った。 π-アリルイリジウム中間体に対する一酸化炭素の挿入を鍵段階とする触媒的炭素-炭素結合生成反応を開発した。Diethyl(E)-3-phenyl-2-propenyl phosphateとエタノールの反応を触媒量の[Ir(cod)Cl]_2と配位子を用い一酸化炭素20kg/cm^2加圧下で行った。生成物としてethyl(E>4-phenyl-3-butenoateが得られた。この生成物はπ-アリルイリジウム中間体において、置換基のないアリル末端に一酸化炭素が挿入して生成するアシル中間体を経由して得られる。生成物の収率は、用いる配位子の影響を受けた。AsPh_3を用いた時収率は90%であり、最も高かった。 イリダシクロペンタジエン中間体を経由する合成反応として、アセチレンジカルボン酸ジメチル(以下DMADと略す。)とモノインとの高選択的交差付加環化反応を開発した。DMAD 2mmolと1-hexyne 1.2mmolを[Ir(cod)Cl]_2/dppe触媒によりトルエン還流下1時間反応させるとDMAD2分子と1-hexyne 1分子が反応して得られるtetramethyl 5-(n-butyl)-1,2,3,4-benzenetetracarboxylateが収率98%で得られた。1-Hexyne以外の種々の官能基を有する末端アルキンや内部アルキンとの反応も良好に進行し、2:1交差付加環化体が高収率で得られた。本反応はDMAD2分子がイリジウムへ酸化的付加して生成するイリダシクロペンタジエン中間体を経由して進行する。
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