研究概要 |
1)dl-1,3-ビス(ヒドロキシフェニルメチル)ベンゼンの結晶(融点161℃)に酸触媒である(1S)-10-カンファースルホン酸の粉末を触媒量(5mol%)加え、めのう乳鉢ですり合せた後に無溶媒下で加熱した結果、融点以下の温度(100℃-110℃)で粉末状態を保ったまま脱水重縮合が進行し、対応するポリエーテル(分子量13300-39300)が得られることを見い出した。この時、反応前後で白色粉末状の外観に変化はみられないが、レーザー顕微鏡や電子顕微鏡を用いて、反応前後における粒子の微視的観察を行った結果、粒子を構成している繊維状微結晶レベルでは溶融していることが明らかになった。 2)meso-1,3-ビス(ヒドロキシフェニルメチル)ベンゼン(融点99℃)の無溶媒重合を行い、1)で行ったラセミ体の重合結果と比較検討を行った結果、メソ体はラセミ体に比べて、低い温度(65℃)で重合するものの、生成するポリマーの分子量は2300-5600と小さ<、ジアステレオマー間で重合挙動に大きな差が見られた。さらに、メソ体にわずか1.5%ラセミ体が混入するだけで、重合開始温度が太きく下がる(19℃)ことを見出した。 3)1,4-ビス(ヒドロキシフェニルメチル)ベンゼン、4,4'-ビス(ヒドロキシフェニルメチル)ジフェニルエーテルと2,5-ビス[ヒドロキシ(4-メトキシフェニル)メチル〕チオフェンのメソ体、ラセミ体をそれぞれ単離し、無溶媒下における重合挙動を調べたところ、2)と同様にメソ体とラセミ体では重合挙動に大きな差が見られることが判った。さらにこれらの重合では、重合途中で生成したポリマーの分解が同時に起こっており、分解物の同定と分解のメカニズムを明らかにした。また、1)〜3)で得られた結果を総合的に見ると、融点の低いモノマー程、低い温度で重合することを明らかとなった。これは、結晶中の分子の運動性に起因していると考えられる。 4)各種アミノ酸類をりん醸触媒下、無溶媒下で加熱することにより、ポリペプチドの合成を試みた。その結果、予想に反し、検討したほぼすべてのアミノ醸で環化反応が起こって2,5-ジケトピペラジン類を生成し、不斉中心の立体も保持されていないことが明らかとなった。
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