研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き[3.3.1]プロペランの分子骨格を持つ1,3-デヒドロアダマンタンのカチオン開環重合によるポリアダマンタンの合成を中心に研究を行った。まず、5-ブチル-1,3-デヒドロアダマンタン(1)を、対応する1,3-ジブロモアダマンタンと金属リチウムとの反応により合成した。1は求核試薬とは全く反応しなかったが、酸やラジカル種とは容易に反応し、開環付加物を高収率で与えた。続いて、1を塩化メチレン中で触媒量のトリフルオロメタンスルホン酸と反応させたところ、-78℃では重合物は得られなかったが、0℃では重合が進行し、反応時間とともに収率と分子量が増加した。0℃、48時間後には、収率は85%に達し、平均重合度約30、約6000の分子量、(Mw/Mn=1.5)を持つポリマーが得られた。NMR、IR、MALDI-TOF-MS、元素分析による構造解析の結果、重合物はDHA類の開環重合により期待されるポリ(1,3-アダマンタン)の構造を持つことが明らかとなった。また、ポリ(1)は、有機溶媒に良好な溶解性を示し、10%重量減少温度は472℃と熱的に安定なことを見出した。さらに、1は、AIBNやBPOといったラジカル重合によっても、無溶媒条件下における加熱重合によっても、開環重合物を高収率で与えることを確認した。こうした重合物の化学構造は、臭化アダマンタン誘導体のWurtz型カップリング反応によって別途に合成・単離した2,3,4量体との詳しい比較を行い、確認した。以上のように、高い環歪みを持つ1,3-デヒドロアダマンタン類の開環重合により、ポリ(1,3-アダマンタン)類が得られることを初めて見出した。現在は、ランダム共重合体およびブロック共重合体の合成、重合条件の探索による分子量や分子量分布の制御などを目指して研究を進めている。
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