研究概要 |
光学活性高分子の主鎖および側鎖の構造が,その高分子全体の配座に与える影響を明らかにし,その知見について高分子の配座を制御することで新たな機能を発現させることを計画した.本研究では特に,光学活性高分子としてα-オレフィンと一酸化炭素との不斉交互共重合によって得られるγ-ポリケトンを取り上げ,(1)溶液中での配座,(2)カルボニルのメチレン化による光学活性炭化水素高分子の合成とその配座,(3)側鎖に導入したアゾベンゼンの光異性化に対する高分子主鎖の応答について詳細に検討し,次の成果を得た. (1)プロペンと一酸化炭素との不斉交互共重合によって得られた光学活性ポリケトンとその単位ユニットのモデル化合物の円二色性スペクトルや旋光分散スペクトルを比較することにより,ポリマー主鎖は二次構造(らせん構造)を形成していないことがわかった.さらに静的光散乱測定より,溶液中においてほぼ伸びきった構造を有していることを解明した. (2)プロペンまたは1-ヘキセンと一酸化炭素との不斉交互共重合によって得られた光学活性ポリケトンに二亜鉛-チタン反応剤を作用させることにより,ほぼすべてのカルボニル基がメチレン化された光学活性炭化水素高分子を合成することに成功した.また,側鎖がブチル基のときには,主鎖の柔軟性が著しく低下することがわかった. (3)側鎖にアゾベンゼンユニットを導入した光学活性ポリケトンを合成した.主鎖がケトンユニットのみで構成されるポリマーは,側鎖の自由度が高いためにアゾベンゼンユニットのトランス-シス異性化に起因する主鎖構造の変化はほとんど起きないことがわかった.一方,主鎖中にスピロケタールユニット25%程度含むポリケトンは,その剛直ならせん構造によって側鎖の構造変化の影響を受けやすくなり,アゾベンゼンユニットの異性化によって主鎖構造が大きく変化することを観察さきた.
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